東京・竹芝にあるダイアローグ・ミュージアム「対話の森」のプログラムに参加してきました。今回体験をさせてもらったのは、ダイアローグ・イン・ザ・ダーク〜会津漆器イン・ザ・ダーク。暗闇で会津漆器に触れて感じられるプログラムです。
ダイアローグ・イン・ザ・ダークを日本に招聘した志村真介さんは、以前に代表の友川が広報ディレクターを勤めていた、ヨコハマ・パラトリエンナーレ2020 オンラインゼミ メディアラボのトークゲストにお招きしてお話を伺い、温かい人柄に感銘を受けました。
今回はそのメディアラボにのメンバーと3人で申し込み、他の参加者をあわせて8名で、暗闇を体験することに。アテンドしてくれたのは先天性の視覚障害を持つまりーなちゃん。目を開けていても、とじていても、見えるものは真っ暗闇という完璧な暗闇のなかでは、アテンドのまりーなちゃんが頼りです。
白杖の使い方の簡単なレクチャーを受けて、いざ真っ暗闇に進むと、最初はなにがなんだかわからずに怖い。「4度目の体験です」という慣れた参加者がペアになってくれて、「こっちだよ」「右側に壁があるよ」と教えてくれました。声と白状から伝わる床の感触を頼りに、暗闇をおそるおそる進みます。
途中、ブランドサッカーで使用している鈴の音がするボールで、輪になってキャッチボールをしてみたり、みなで電車に乗り込んだり。次第に、暗闇とはいえコミニケーションがとれること、恐る恐る足を運んでみて、手に触れるものを確認して、今自分がいる世界がどうなっているのか確認ができることが分かると、見えないことの不安も和らいでいきました。
そして、会津漆器の作り方の過程を、素材になる木から、掘り出した器、漆を塗り始めたばかりの器と、制作過程の素材を触らせてもらいながら体験しました。実際には目にしていないそうした制作過程の器たちを触覚で感じ、とても具体的に理解した感覚が、体験を終えた今、こうして残っているのが、とても不思議な気がします。
そして、お庭(たぶん日本庭園のようなところ)で、完成した漆器に水を注いでもらい、ひとくち。これまで味わったことがないような、美味しい水に感じました。漆器のやわらかさ、漆器の中で水が揺れるのを感じること、水を口に含んだ時の透明でとろっとしたような味わい。視覚以外の感覚で、こんなにも漆器の持つ美しさを味わうことができることに、衝撃的を受けました。目で見ていたときよりも、むしろ、美をくっきりと味わいきったように感じています。
こうして暗闇を体験してみて、「目が見えないってどういうことなんだろう?」と、頭でいくら考えても、実際に体験をしてみないと想像もつかないことを思い知らされるとともに、自分の聴覚や触覚、空間把握やコミュニケーション力が、視覚を駆使している日常とは違う方面に、ぱあっと開いていくのも感じました。人間とはかなり柔軟にできているものです。
刺激的な体験を終えると、頭の中が少しぼんやりとする感覚が。きっとこれまで繋がっていなかった、使えていなかった脳のシナプスがつながったことで起こる身体感覚なのではないかと想像します。
感性や感覚を磨きたい人にとって、ダイアローグ・イン・ザ・ダークの暗闇は、あっという間に普段は使えていない感覚をひらかせてくれる、とても素敵なエンターテイメントだと感じました。初対面の人たちとも協力して、漆器の感想なんかも気軽に言葉にして語り合えるのが楽しく、コミュニケーションの新たな回路までひらかせてくれました。
暗闇の世界での旅を終えて、最後に参加者同士で体験のシェアをする時間では「わかっているつもりでも、毎回違う。だから何回も来たくなっちゃう」と話してくれた方が。何度もかよって、自分にとっての新しい感覚に出会えるといいなと思います。
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