オランダ生まれの彫刻家、マーク·マンダースの個展が木場の東京都現代美術館で開催中です。
マーク·マンダースの特徴的な言葉に、「建築としての自画像」という表現がありました。その美術館にあった作品を制作し、鑑賞者には順路をたどることで、物語を感じてもらおうというもの。
実際に会場を訪れてみて、この「建築としての自画像」に似た概念を想起しました。箱庭療法です。
『セラピスト』というベストセラーになった書籍に、著者が箱庭療法を体験する様子が、たっぷりとした時間軸で紹介されていて、とても面白いのですが、端的に箱庭療法を紹介すると、クライアントの精神世界を、箱庭と呼ばれる小さな世界に、砂や小さな人形などを用いて投射し、遊戯の中からさまざまな効果を期待するもので、表現セラピーとも隣接した分野の手法です。日本には河合隼雄さんが紹介しました。
マーク·マンダースのいう「建築としての自画像」は、美術館を箱庭と捉えて、マンダースの自由で少しはかなげな精神世界を物語のように綴っている行為を示しているように感じました。
だから、本展でもマンダースの不在が強調されるわけです。
権威でもある美術館という機能を、高次から眺める所作がなんともアイロニカルかつ知的で、業界批判が好きなアート人にとっては、マンダースは密やかな共犯関係を結びたくなる作家なのでしょう。
観賞後は東京都現代美術館の地下にある、100本のスプーンでランチをいただきました。展覧会に合わせた特別メニュー「架空の芸術家のためのランチコース」を注文。
前菜が豪華でした。
イカスミとサーモンにブラックオリーブのタルタルが黄色いソースにのっている様子は、味も見た目も、マーク·マンダースの世界観とシンクロするものでした。
メニューを考える料理人も、楽しんでいるんでしょうね。
メインは数種類から選べ、この日は鶏のコンフィにしました。よく火の通った鶏肉がほろほろと柔らかくて絶品でした。
100本のスプーンはお店も広くゆったりとしたつくりで、美術館なのでバリアフリーも徹底しているからか、近所のママ達がベビーカーで乗り付けてランチ会をしている様子。美味しい食事で、リフレッシュしているのでしょう。
1人でも入りやすい気軽さがあるので、マーク·マンダース展を訪れるときには、ぜひこの展覧会特別メニューを試してみてください。
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