日本初のオルタナティブ・スペースとされる佐賀町エキジビッド・スペースの展覧会が、群馬県立近代美術館で12月13日まで開催中だ。
このスペースの主宰者である小池一子さんの仕事を敬愛している私は、友人を誘っていそいそと出かけて来た。展覧会としては小ぶりだったが、展示空間のつくりかたに衝撃を受けた。品のいい展示のつくりかたであり、何かアヴァンギャルドなものがそこにあった訳ではない。だが、ひとつのコーナーで空間を見渡した際に、目に入る作品同士が干渉し合うことで立ち上がってくる、独特の色気と、一人の作家の作品群のアウラのみを感じられるように、他の作品の干渉を排除した閉じたコーナーが、一つの大きな空間の中で、絶妙なバランスでパッチワークのように組み合わされて共存していたところが圧巻だったのだ。
自らのスペースでなんども展示を繰り返して来た人ならではの、習熟された展示手法なのだと想像する。もうセンスとしか言いようのない凄みがそこにあった。例えば、ある地点から展示空間を眺めると、手前の大きな朱色の作品の向こうに、他の作家による作品に、ぽつり、ぽつりと、丸い赤が見えたりといったところ。
公共建築百選に選ばれている、磯崎新の手による群馬県立近代美術館の空間を生かしたように、キリムを敷き詰めた空間では、異国の大地から草の香りが立ち上がってくるようだった。
空間と作品とが呼応して、ここにしかない鑑賞体験を導きだしている。それも、「こうすると素敵でしょう?」と、耳元で小池一子さんが話しかけてくるような、美術史の文脈というよりもむしろ、生活の中の美学史が立ち現れてくるように感ずる。
鑑賞後の昼食は近くの梅田屋という蕎麦屋に行った。
蕎麦もつゆも香り高く、新鮮なわさびも楽しませてもらったが、とにかく量が多い。油断して食べ過ぎ、帰りの電車のお楽しみにしていた、高崎名物だるま弁当に手が伸びなかった。群馬県立近代美術館と蕎麦という組み合わせは、なにやら人気のようで、おすすめの蕎麦屋のまとめサイトもあったので、参考にされたし。
帰宅後、いろいろと調べてみると、小池一子さんには『空間のアウラ』という著作がある。早速ぽちりと注文をしてみた。
Museum fatigue:美術館づかれ
展示空間で作品を見るごとに1作品を見る時間が減少していく現象を名付けた言葉。本ブログのMuseum fatigueカテゴリーは、アート作品の鑑賞に肉体・精神的疲労はつきものであり、鑑賞後には美術館近くのカフェやレストランでのんびりと座り、作品の印象を語らう時間をもつことが理想的だという考えのもと、筆者が実際に出かけた美術展と近くの飲食店等を紹介するものである。
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