こんにちは。gallery ayatsumugi の友川綾子です。
今週末、7月7日(金)から7月17日(月・祝)まで、内藤瑶子展「茅ヶ崎」を開催します。
場所は広尾にあるアートルーム企画室。スパイラルで長くアートプロデューサーをされており、今年から2027年国際園芸博覧会の催事・広報ディレクターに就任された守屋慎一郎さんが運営されているスペースです。私にとっては、地域とアートを繋ぐ仕事を切り開いてきた、面白い仕事の数々を形にされている大先輩です。
紹介する作家は内藤瑶子さん。
高校時代から描いた作品を評価され、画家としての活動をスタートしました。10代から画家として生きてきて、プロ画家としてのキャリアはもう20年以上。すごいことです。これまで、業界でも信用の厚い画廊で発表をするなど活躍をしてきました。
「私よりも観てくれる人がすごいなっていつも思います。こんなに感じ取って、受け取ってくれるんだって」
と、話す瑶子さん。これまで数々の目利きのコレクターさんに創作の応援をされてきたのが伺えます。2018年にはテレビ番組「ブレイク前夜」でも取り上げられました。
ayatsumugiとのご縁は茅ヶ崎市美術館での内覧会でした。Webページを拝見して、作品の力強さや構成力に驚かされ、彼女のアトリエにお伺いして、作品を拝見しつつ話を聞かせてもらうことにしました。
驚いたのが、アトリエに大型の版画のプレス機が設置されていたこと。
いま、瑶子さんは「コラグラフ」という手法で制作しています。「コラージュ(貼る)」という言葉に由来する技法で、その名のとおり反面にさまざまな素材を貼って凹凸をつくり、絵柄を浮かび上がらせます。
よく観察をすると、木目が浮かび上がったりしているのはそのためです。日常のごくありふれた素材を版に使用していたりする様子を面白く感じました。繊細な銅版画とくらべて、コラグラフは大胆さと勢いが出せるのが魅力。瑶子さんは刷り上がった画面にさらにコラージュをしたり、ペイントをしたりと、自由に大胆に画面を仕上げています。
瑶子さんは「わからないものを描きたいんですよね」と話してくれました。
哲学研究をしている彼女がいま、描くときに持っている関心ごとは、日常の中にパラレルに挟み込まれているような「わからなさ」だというのです。
私たちの日常はありふれてわかりきっているかのように思えますが、実は科学で解明されていない事象はまだまだたくさんありますよね。ある日、唐突に科学が変化すると、これまで自明とされてきたものに、異なる意味が付加されるかもしれません。
かつては油画も日本画も手がけていたという瑶子さん。アトリエでそんな話を聞いていたら、「だから版画なのか!」と、彼女がいま選んでいる手法が腑に落ちました。日常のものから、反転されて生み出される図像には、偶然性からの「わからなさ」がそっと忍び込みます。その「わからなさ」には、世界の無限の広がりのようなものを感じさせられるのです。
今回、展覧会を開催するにあたり、瑶子さんの作品は誰がどう観ても充分すぎるほどに骨太で本格的ですから、あえて親しみを持ちやすいテーマを設定してみました。本格的な夏の始まりに海を感じる企画。そして、瑶子さんが生まれ育ちいまも日常を営む街、「茅ヶ崎」を展覧会タイトルに。
オープンして間もないフレッシュなアートルーム企画室という場所で、これまでのお客様に加えて、また新しい層の方々が、瑶子さんの作品の魅力と出会っていただける機会になればよいなと願っています。
今回の展覧会のために、小品を中心に新作もたくさん制作してくださいました!会場で作品を実際に目にしてもらうことで、パワフルさや大胆さだけではない、ごく繊細で独特の空気感をたたえる様子を味わっていただけたら嬉しいです。
内藤瑶子展「茅ヶ崎」 2023年7月7日(金)〜17日(月・祝) 時間:12:00〜19:00
場所:アートルーム企画室(東京都渋谷区広尾2-13-6 ARK1001)
東京メトロ広尾駅から徒歩8分 JR恵比寿駅から徒歩13分 都営バス06系統広尾一丁目バス停から徒歩1分
主催・企画:gallery ayatsumugi
協力:合同会社企画室
内藤瑶子(ないとう ようこ)
1985年生まれ、神奈川県茅ヶ崎市出身、在住。高校を中退した後、独学で油画、日本画、ドローイング、版画などの多様な技法での絵画制作を始める。東京のギャラリーを中心に個展(通算40回)を開催。その他、グループ企画、国内外のアートフェアなど多数出展。日本大学大学院文学研究科 哲学専攻修了。
Comments