昨年6月に東京・有楽町のYAUでの展覧会で好評を博した小川敦生さんが、この夏、横浜で個展を開催いたします。雨傘に施されたドローイングで構成する空間が楽しみです。
【概要】
岩崎ミュージアム第506回企画展
小川 敦生展 raindrop impressions
突然の暗転から天候が崩れることを予知する間も与えず、雲から地へと線引く雨滴。
景色が雨線でシュレッダー掛けたかのように散り散りになる。
飛沫受けた腕や掌は、無数の拡大鏡で装ったかに、輪郭が暈けてゆく。
眼にしているはずの事象は、家に帰り着く頃には、夢と区別がつかないほどに滲んでいるだろう。
だからだ、ここで傘を開くというのは、いま目にしていることが崩れていくのを止めたいという志向。
通りに幾つもの認識の待避地が並ぶ。
そうして、この見通しの利かない状況だからこそ、訪れるものがある。
「わたし」を「わたしたちの既知である場所」から引き離す透明なドームの下、金属の輻の間に雨滴が描く模様を見上げよ。
それがその時わたしにのみ伝えられた世界からの問いなのだから。
小川敦生(おがわ あつお)
1969年、神奈川県生まれ、在住。
手で描くことに拘りながら、線の自律に任せるように反復、展開、時に逸脱しながら描き編むドローイング作家。場の特性に応じて、紙、ガラス、壁面など様々な素材の上にペンやニードル、チョークで描かれた一本の線は、紋様めいた繊細なかたちを構築し静謐な空気を生む。2005年、上野の森美術館「VOCA 2005」、2010年、東京都現代美術館「MOTアニュアル」、2023年、茅ヶ崎市美術「渉るあいだに佇む-美術館があるということ」などに参加。
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